第01話-2

地球・衛星軌道上・・


宇宙時代となった各惑星には、それぞれに専用の「港」が設けられていた

もちろん宇宙に・・それも衛星軌道上などという場所に船がいるわけもない

それらは宇宙船、宇宙戦艦のために作られたステーション・・

言い方を正すなら、「衛星港」と呼ぶべきだろう


地球だけでなく多くの惑星にある衛星港は、細い棒きれ形状の本体が、まるで竹とんぼのように2枚のソーラーパネルを開いて回っている

おかげでそのまま、「タケトンボ」という愛称までついてしまっていた


どうやら連絡艇には間に合ったらしく、タケトンボの受付ロビーにロディとネスはいた

・・というより、二人ともそこから向こうの「船着き場」へと走っていた

その名の通り宇宙船を船舶に見立て、ドックの事をそう呼ぶ。


「ドックナンバー21・・・やっとご到着!!」

「いいから早く乗って!発進申請できないでしょう!?」


この衛星港から自分の宇宙船・艦を飛び立たせるには手順がいる

まずは受付で発進スケジュールを提出(いつ発進するか・・と。)

その後艦のブリッジから通信により確認をとってはじめてドックを離れる事になる・・


つまり、二重の手順が必要なのだ。


提出を済ませてきたロディとネスは、自社専用のドック「NO.21」へ到着した

そこには宇宙船ではなく、「戦艦」に分類される大がかりなものが多い

なぜユニオンリバーという貧乏会社に戦艦などがあるのか・・

・・聞いていると頭が痛くなりそうな話なので、ここでは深く語らないでおこう


ロディはその戦艦のブリッジにつながる通路・・ラダーを走り、自動でハッチが開いた瞬間に飛び込んだ

かなり遅れてひぃひぃ言いながら、ネスが続く・・(ロボなのに・・)


「遅かったなぁ、発進準備できとるで~♪」

「おう、係留アーム解除!」

「了解。」


シュウの声と共に戦艦をドックに固定していた大型の係留アームが離れていく

この船の特徴である二枚のブレード部分と、本体周辺に固まった推進ブロックが少し開いた


「発進体勢移行」


アームが分離した艦は無重力により浮いたまま静止している

ブリッジにしばし、静かな時が訪れる

ロディ、メイ、シュウ、セラが座るシートと、もう一人分のシート

ロディのシートを囲むように四つのシートが配置されたブリッジ。

他二人の姿がないのは、それぞれが別の役割を担っているためである


ネスはこの艦の制御をするため、メインエンジン真上の制御室へ

シードはブリッジから少し後ろの砲手席(ガンナー・シート)

こっちはこの艦の武器という武器全てを操作するためのものだ。


しばらくして、艦全体に衛星港の受付から通信が入る


「許可申請受領、ドックNO.21・・ユニオンリバー社所属・高機動戦闘艦「ブレードバッシャー・・聞こえますか?」


何度もやっているハズの通信応答だが、この時ばかりはいつもロディの顔と返事がキリっとしたものになる

彼が「無駄な事にこだわるええ格好しい」な事が一番の理由であるが・・


「了解だ。こちらドックNO.21・・これより艦を出航させる」


こういう時だけは急いでいても真面目になる、彼のみょーな特技

しかしシュウも、セラも、メイも、呆れたような顔でその彼を見ていた

突き刺さるような、半分軽蔑に近い目線も彼は気にしていないのだが


「ハッチ開放、進路確認完了・・・・NO.21、発進どうぞ」


受付のオペレーターは慣れた口調でそう言うと、通信を切った

ロディ達の艦はメインエンジンを点火し、いつでも発進できる体勢をとる

だが、準備が整ってすぐに発進するというのは一般の艦船にのみ通用する話・・


社長の趣味のせいで発進にはもう一手間いるのだ


「行くぜ!!ブレードバッシャー!!・・発進ッ!!!」

「了解!ブレードバッシャー・・発進ッ!!」


シュウが復唱すると同時に艦の推進力である大小8つのバーニアが噴射される

・・ちなみにシュウはこのときだけ熱血口調で喋っているが・・もちろんそれは彼の演技である

この儀式がなくてはロディが怒りだし、押さえられなくなるのだから仕方のない事だった


タケトンボからはこの間にもどんどん離れていく

この艦は約300メートル、S.Gでは小型巡洋艦くらいの小規模な戦力でしかないが・・

仮にも戦艦なのである、宇宙船という規模に比べると格段に強力な戦力を備えていた


特に、この艦の場合は。

正式名称はかなり長く「特一級高速突撃戦闘艦・300メートル級小型航宙艦船「ブレード・バッシャー」

名称以外の事は・・前述の通り後で語るとしよう


ブレードバッシャーが順調に航行する中、ブリッジではちょっとした声が聞こえていた


「目標の工業衛星までは距離がありますね」

「いーからとっとと進めろ!もう残り一時間だぞ!?間に合わなかったらまずいんだぞ!?」

「・・わかってますよ」


・・・・お兄ちゃん・・(泣)

このとき妹は、兄のさっきの真面目な表情との格差に嘆きすら覚えた

それほどまでにヒドイ慌てぶりで、ロディはぎゃーぎゃーと騒ぎ立てていた

しかしそういった騒ぎの中、ロディの左後方のシートではメイがすやすやと静かに寝息を立てていた

何せ暇さえあれば彼女は寝ているのである、起きていても食べているか遊んでいるか・・だ。

ともあれ、ロディとメイ以外はブレードバッシャーの航行のため真面目に働いている


・・そしてロディとメイも、何もしないで吼えたり寝たりしている「ぐーたら」ではなく、別に特別な役目・・それもT.Cの仕事をする上で色々と必要になる役を担っていた・・


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